パーキンソン病と“脱力”の関係
──固まる・転ぶ・息が浅い。その背景と、ニュートラルゾーンの役割
動きが固くなる。
身体がひとつの塊のように感じる。
動き出しの最初の一歩がスッと出ない。
そして、ふとした場面で転びやすくなる。
「年齢のせいかな」と思われがちですが、
これらは パーキンソン病の初期〜中期にかけて見られやすい特徴 でもあります。
当院にも、診断済みの方、診断前から「身体が固まってきた」と感じて来院される方が複数おられます。
共通しているのは、次のような“身体の使い方の乱れ”です。
- 力が抜けない
- 息が浅い
- 全身が緊張している
- 起き上がりや歩行がぎこちない
- 動作の始まりと終わりがスムーズではない
この「力が抜けない」「頑張るほど動けなくなる」状態は、パーキンソン病の特徴です。
そして、まさに ニュートラルゾーンセラピーが最も得意とする領域 でもあります。
パーキンソン病とはどのようなものか
パーキンソン病は、脳の「黒質(こくしつ)」という部位で、ドパミンを作る細胞が減っていくことで起きる神経疾患です。
ドパミンは、姿勢の安定・脱力・動き出し・協調運動といった “無意識の身体操作” を滑らかにするために欠かせません。
■ 主な症状(運動症状)
- 手足の震え(安静時振戦)
- 身体のこわばり(筋固縮)
- 動作がゆっくりになる(動作緩慢)
- 姿勢反射障害(バランスが崩れやすい)
■ 非運動症状(これも重要)
- 自律神経の乱れ(便秘・発汗異常・血圧変動)
- 睡眠障害
- 嗅覚の低下
- 不安・焦燥・気分の落ち込み
つまりパーキンソン病は、
「体の動きだけでなく、全身の神経の調律が乱れていく病気」 とも言えます。
なぜ身体が固まるのか?
──パーキンソン病に特有の“過緊張”という現象
ドパミンが不足すると筋肉がゆるみにくくなり、無意識の力みが強まります。
その結果、
- 何をするにも“頑張りすぎる”
- 部分ではなく全身に力が入る
- 呼吸が浅く、止まりがちになる
- 動作がガクガクし、転倒につながる
私の言葉でいえば、
「身体がまとまらず、バラバラの部品を力ずくで動かしている状態」 です。
医療ができること/できないこと
■ 医療でできること
- レボドパ(L-ドパ)などの薬物療法
- 脳深部刺激(DBS)
- 理学療法・運動療法
■ 医療でも届きにくい領域
- “力が抜けない”という体感
- 呼吸の浅さ
- ぎこちない起き上がり・歩行
- 身体地図(ボディマップ)の乱れ
- 過緊張スパイラル
- 動きの質(Quality of movement)
薬は脳神経に作用しますが、
身体の操作方法・動作の連動性・力みのクセ を変えることはできません。
ニュートラルゾーンセラピーが相性が良い理由
ニュートラルゾーンセラピーは、痛みを取るだけの施術ではなく、
“神経系を整え、身体を自然体へ戻すアプローチ” です。
パーキンソン病の方に相性が良い理由は次の通りです。
① 微弱圧で、過敏になった神経系を鎮静させる
パーキンソンの固縮は「強く押せば緩む」種類ではありません。
むしろ 触れるか触れないかの優しい刺激 が適しています。
② 呼吸が深くなり、過緊張のループが切れる
横隔膜まで固まってしまうため、浅い呼吸が不安と緊張を呼び込みます。
深く静かな呼吸が戻ることで、過緊張の悪循環が断ち切れます。
③ 動作の“始まり”が軽くなる
起き上がりや歩き出しがスムーズになると、転倒リスクは大きく低下します。
ニュートラルゾーンの“波の動き・連動”はここに直結します。
④ 身体地図(ボディマップ)の再構築
良質な触覚入力、正しい骨格感覚、静かな動作誘導により、
身体の地図が整い、動作がまとまりやすくなります。
実際に期待できる変化
- 起き上がりが軽くなる
- 歩き出しの恐怖が減る
- 夜間のこわばりが減少
- 呼吸が深く・静かになる
- 転倒が減る
- 気持ちが落ち着き、不安が軽くなる
- 薬の効きが安定したと感じる方も
個人差はありますが、
「過緊張がほどけ、身体のまとまりが戻る」 という方向性は共通しています。
ニュートラルゾーンセラピーは医療の代わりではありません
しかし、“医療を活かすための身体づくり” としては非常に有効な補助療法です。
薬物療法、主治医のフォロー、理学療法と併用することで、生活の質(QOL)は大きく向上します。
まとめ
パーキンソン病は、単に「震える」「動けない」という病気ではありません。
“身体が力み、まとまらなくなる病気” とも言えます。
ニュートラルゾーンセラピーは、
・過緊張をほどく
・呼吸を整える
・動き出しを軽くする
・動作の連動性を取り戻す
・転倒リスクを減らす
こうした面で、パーキンソン病の方の日々の苦痛を軽くするアプローチ です。
「頑張る」のではなく、 「ゆるんで、まとまり、自然体へ戻る」。 このプロセスを丁寧にガイドしていくことこそ、ニュートラルゾーンセラピーの真価です。

